木曾御嶽 椹谷山 (1884.5m) 2011年4月10日
所要時間 5:17 林道入口−−5:35 橋を渡ろうとする(途中で諦めて戻る) 5:40−−6:01 兵衛谷渡渉(適地探す時間を含む) 6:13−−6:40 北東尾根−−6:59 巻き始める−−7:18 県境尾根−−7:44 1878m−−8:05 1915m峰−−8:29 椹谷山 9:04−−9:30 1915m峰−−10:43 北東尾根−−11:06 兵衛谷渡渉−−11:28 林道−−11:41 林道入口
概要
濁河温泉から上俵山北西尾根を1950mまで登り、そこから西側を巻いて県境尾根に出て椹谷山を往復。最大の難関は兵衛谷渡渉で、林道の橋はまだ工事中で保護具が無しで転落すれば数10m墜落して死亡確実な幅約20cmの鋼鉄製桁を途中まで渡ったが、あまりにリスクが高く諦めて兵衛谷右岸沿いを歩き、右岸が岩壁化して高巻きする必要が出た場所で何とか渡った。水量は危険なほどではなかったが幅が微妙で少し足が濡れてしまったが最小限の被害で済んだ。帰りはこれより100mくらい上流を渡ったが(DJFはこちらを渡渉したようだ)、ここは石の配置が良好で渡りやすいのだが、右岸の岩壁は通過不能で高巻きして疲れた。上俵山北西尾根から県境尾根はだだっ広く、登りはいいが視界が無いときの下りは非常に危険。ほとんど現在位置の特定が不可能。県境尾根は地形が明瞭な南寄りの肩を歩くのが良い。椹谷山山頂は雪に覆われ三角点は発見不能だったが目印が3つあった。樹林で展望皆無。雪質は最悪で上俵山北西尾根に乗るまではスカスカでスノーシューでも踏み抜き多発。尾根に乗ってからはスキートレースに助けられた。県境尾根は日当たりの関係か踏み抜きは少なかった。
ルート地図(クリックで等倍表示) |
木曾御嶽の2000m峰は全て登り終わったが2000m以下で気になる山がいくつかある。その中で椹谷山は最も気になる山であった。標高は1900m近くあるためぜひ登りたいところで、しかも上俵山よりもずっと西にあってアプローチが悪い位置にある。北側には林道があるがゲートが掛かっているので歩きが長いし、林道から県境稜線まで結構あって道がない斜面を登る必要がある。地域、標高から考えて笹薮確実で残雪期しか考えられない。標高差が約1000mの林道経由で登るか、それとも横移動が長い濁河温泉経由で登るか微妙なところだ。
今週末は土曜日は下界では暖かい雨だったが日本海側では気温が低下、ネットの降雨状況では上越国境は雪であり、当初は巻機山から東側の稜線をやろうかと思っていたが重い新雪ラッセルが予想される状況では突っ込むのは得策ではない。北ア付近も雪で、御嶽辺りは雨マークだったので、いい機会と思って椹谷山を目指した。土曜は丸1日雨なので日曜に狙いを定めた。登山口をどちらにするか悩んだが、雪の状態を考えるとより標高が高い濁河温泉側の方が有利と判断した。
先週に引き続き開田高原を抜け、今度は南下してまだ営業しているチャオスキー場を通過、この先のゲートは時間通行止めで通り抜けられるか心配だったが、土日祝日は17:30までオープンで現在時刻は17時ちょっと過ぎでまだ開いていた。施錠は濁河温泉側から車がやってきて行うのでまだ大丈夫だ。通過して狭い道の区間に突入すると反対側からハザートランプを付けたフォレスターとすれ違ったが、これはゲートを閉めに行った車だろう。これが戻ってくると濁河温泉側のゲートも閉じられる。DJFのような被害者になると予想される車が2,3台すれ違った。
濁河温泉側ゲート | 通行時間の案内。真冬でもOKらしい |
少年自然の家 | 路側に止めた |
無事にゲートを通過、左に曲がって少年自然の家入口で右折し進むと少年自然の家で除雪は終了。門の前に露骨に駐車するのも気が引けるので橋まで戻って路肩に駐車。今夜はここで仮眠だ。もう雨は上がって晴れてきているが気温はまだ高く雪はスカスカ、これが明朝締まるのかえらく心配だ。今回のコースは大した標高差はないが距離はそこそこあり、悪い雪質だと椹谷山まで届かない可能性がある。かといってこの雪質だと下島側の林道ゲートから歩いても標高がここより低い分雪の状態は更に悪いだろうし、傾斜がきついので雪質が悪いともっと疲れる。予定通りここから往復することにして寝た。
林道入口 | きれいに除雪されている |
上俵山へ続く北西尾根 | なんと林道の橋が工事中 |
翌朝、5時過ぎに行動開始。前回使った遊歩道は入口から深い雪に埋もれているので少年自然の家手前から左に入る除雪された林道を使うことにした。前回来たときにはこの林道は兵衛谷右岸沿いで終点だったが今はどうなっているだろうか。対岸にも同様にどん詰まりの林道があったのでもしかしたら橋でつながっているかもしれない。だったら兵衛谷の渡渉が不要になるので大助かりなのだが・・なんて考えたら本当に橋がかかっているではないか! これで心配事の一つが消えた。
スキーヤーの車(帰りに撮影) |
林道を歩いて下りにかかると路肩に1台の車が止まっていて、その主がスキーを準備して出発準備中。話を聞くとこれから上俵山経由で御嶽山頂まで足を伸ばすとのこと。スキーなら時間的にそれも可能だろう。それにスキーならスカ雪でも問題ないだろうし。今日は雲一つない上天気で森林限界を出ると日焼けしそうだ。
梯子は無いが足場を伝わって橋に登る | 足場は無く手すり無しの鋼鉄の桁の上を歩くしかない |
下から見た橋。落ちれば命は無い | スノーブリッジで支流を渡る |
除雪された林道を下って橋直下に到着すると橋はまだ工事中で道路と繋がっておらず、桁は地面よりかなり高い位置にあり、危険防止のためかそこに登る作業梯子は取り外されていた。しかし足場は立っていたのでそれをよじ登って上に出るとびっくり。作業用の通路があるかと思いきや、そんなものは無くて2本の桁が対岸に一直線に伸びているだけだった。それに桁には手すりもないし転落防止のネットもなく、足を滑らせれば数10m下の谷底に一直線だった。でも桁の幅は20cmくらいあるので渡るのは不可能では無かろうと歩き始めたのだが、朝は鋼鉄は冷え切って霜が降りて滑りやすく1度ひやりとした。手すりが無いのは致命的で、半分ほどまで行ったが落ちたらあの世行き確実な状況で、ここまでリスクを取るよりも渡渉点を探した方がずっとマシと判断、Uターンして橋を降り、兵衛谷右岸に下った。本谷に下る前に支流を渡る箇所があったが、本流付近は流れが出てしまっており少し上流側に登ってスノーブリッジで恐る恐る渡り、急斜面をよじ登って平坦地に出て本流右岸に下りた。DJFはここを中州台地と表現していた。
なだらかな平地を遡る。雪質は既に最悪 | これ以上の溯上は高巻きが必要 |
ここを渡った。少し靴下を濡らしただけで済んだ | 対岸の様子。笹籔は完全に埋もれている |
最初は谷が深くて渡れそうに無かったが、右岸側が岩壁化して高巻きする必要が出た場所のすぐ下流が谷が浅くなって渡れそうな場所が3箇所出現した。1箇所は幅2mくらいの流れで対岸にどうにか飛べるかどうか。1箇所は同じく2mくらいだが雪が付いた高い位置の岩から低い位置の岩へ飛び移る場所、そして最後の1箇所は幅1m強ほどで一番狭いが両岸が切り立って落ちたら大濡れする前に脱出するのは絶望的な場所。悩みに悩んだが岩の間を飛ぶのはやめて平地の渡渉に決定。スノーシューを対岸に投げてピッケルはザックにくくり付けて多少濡れる覚悟で滑りやすい石を飛んだら案の定距離が不足して水深20cmくらいの流れの中に右足が落ちたがすぐに岸に上がって僅かに靴下が濡れただけで済んだ。最初から被害が大きくなくてよかったぁ。
谷沿いを登る。スキー跡あり | 結構急で雪質悪く息が上がる |
再びスノーシューを装着して傾斜ができるだけ緩い斜面を選んで登っていく。ここはスキーヤーも渡渉に使うようで斜面には古いスキー跡があちこちに残っており、雪は昨日より締まったがまだスカスカで脛まで踏みぬくことが多く、スキー跡の上だけは締りが良くて半分くらいしか沈まないので非常に歩きやすい。スキー跡を辿って小さな谷をジグザグに上がっていく。朝のこの時間でこの雪質ではこりゃ帰りはズボズボ潜るだろうな。雪質が悪い上に傾斜がきついので最初からえらく体力を絞られTシャツ姿になっても暑いくらいだ。周囲はシラビソ樹林で日当たりが無いのも雪が締まらない原因だろう。上俵山に登った時は沢の近くは笹が出てしまっていたが今は笹のさの字も見えないくらい雪が豊富だ。
北西尾根に乗る | ここだけスキー跡が非常に明瞭 |
だいぶ息切れしながら上俵山北西尾根に乗った。それと同時に今までの急斜面から開放され広い緩斜面帯に変貌する。ここにも古いスキー跡があり、それを踏んづけて登っていく。この雪質がどこまで続くのか。県境尾根がこの状況だったら体力的に椹谷山まで届かないかなぁ。同じような傾斜が続き変化がないシラビソ樹林で高度計が現在位置把握の唯一の手段だが、これから巻きルートに入るとそれもできなくなるな。県境稜線も同じように広大な緩斜面なので、県境尾根に出たことすら分からないかもしれないなぁ。まあ、いざとなったら最終兵器のGPSがあるけど。
1950mで右に巻き始める | 変わり映えしない風景と緩斜面が続く |
高度計が1950mを指したところで右に巻き始める。できるだけ等高線に沿って歩くが、障害物があった場合は上を選んで進んだので少しずつ高度があがる。標高が下がると谷や尾根を巻き込みながら歩くようになって距離が増えてこの雪質では損失が大きいので、逆に上がった方がマシだとの判断だった。どこまで行っても広大な緩斜面が続き、高度計も同じような値で植生も同じようなシラビソ樹林でどのくらい進んだのか全くわからず、これでは迷っても分からないだろう。今は太陽の方向で方角を把握しつつそれらしい方向に進むだけだ。
県境尾根到着。景色は一向に変わらない | 県境尾根を西進。樹林で尾根の先の様子が見えない |
代わり映えしない景色が続いていたが、南に進んでいると急に急斜面が落ちる場所に到着、ここが県境尾根だ。県境尾根の南側は急激に高度が落ちているので、その肩に沿って進むのが一番確実だ。北にずれると緩斜面で別の尾根に引き込まれ可能性がある。今までは暗いシラビソの純林だったが県境尾根に乗ってからはダケカンバが混じるようになって明るくなったことに気づいた。ダケカンバは落葉して日当たりが良く、雪の締りがいいはずなのでできるだけダケカンバの近くを歩いたら踏み抜きはほとんど無くなって快適に歩けるようになった。これなら椹谷山まで大丈夫そうだ。
県境稜線も緩く広大な尾根でガスったら非常にやっかいだが、今日は雲一つない快晴で南側の肩の位置が良く見えるので尾根を外す心配はない。樹林が深くて前や後ろの尾根の様子が皆目見えずに前方に本当に椹谷山があるのか確認できないが、進行方向はあっているので信じて進むだけだ。
1878m付近。ちゃんと傾斜が無くなった | 1915m峰への登り。ここだけ樹林が開ける |
1915m峰の登りから見た乗鞍岳 | |
1915m峰の登りから見た北アルプス |
緩やかな下りが終わって水平移動、ここは1878m付近のはずだ。そして緩い登りにかかると背の低い樹林となって視界が開ける。右手には真っ白な乗鞍岳と、その左には北俣岳、黒部五郎岳、そして笠ヶ岳。あちらもドピーカンだろう。写真をパチリ。
1915m峰東端の露岩 | 1915m峰最高点付近 |
1915m峰から見た椹谷山 | 1915m峰から見た小秀山付近 |
1915m峰の東端は大きな石がいくつか鎮座し、巻いても良かったがもしここが最高点だったらちょっと残念な思いをするのでその隙間を通過した。最高点はその先の平坦部のように感じたが正確なところはわからない。平坦地の真ん中には立ち枯れた大きなシラビソが立っていた。その先の進路が読みづらく危うく北尾根に引き込まれそうになったが樹林の隙間から左手に県境尾根を確認することができ進路修正できた。
1880m峰東端の露岩 | 雪庇現れる |
雪庇から見た木曾御嶽 | 雪庇から見た三浦山 |
次の1880m峰も最初は露岩が登場、これは南を巻いた。椹谷山山頂のある1880m峰への登りは今回初めて雪庇が連続し明るく気持ちのいい場所だった。ここからは北アはもちろん、南側の小秀山周辺や西側の白山も見ることができた。
椹谷山山頂 | 山頂の目印(2種類巻かれている) |
山頂の目印 その2 |
傾斜が緩んで小ピークになったので山頂かと思いきや、樹林を通してまだ先にピークが見えた。シラビソの尾根を緩やかに登ると今度は本当の椹谷山山頂に到着。といっても積雪は1m以上はあるだろうから三角点は確認できないが、GPSの表示は間違いなくここが山頂であると告げている。また、テープや赤布が3つほど存在していた。DJFのリボンや布KUMO、MWV標識も無し。残念ながら展望も無し。樹林の隙間から差し込む日向に陣取ってしばし休憩。いや〜、今回は雪質の悪さで疲れた。県境稜線はマシだったので帰りの登りはさほど心配はないが、県境を離れて巻くところは傾斜も無く踏み抜きは堪えそうだな。
帰りは基本的に同一ルートだが、兵衛谷の渡渉だけは場所を変えた方がいいかもしれない。というのも行きで使ったところは沢の水深が浅くなるところで、気温が上がって雪解けが進んで水量が増えるとすぐに川幅が広がって飛べなくなる可能性が高いからだ。もっと上流方面で渡渉可能な場所を探した方がいいかもしれない。
1915m峰の立ち枯れたシラビソ | 県境尾根の緩斜面を登り返す |
巻きルート真最中 | 往路の自分の足跡に出合う |
さて、戻ろう。県境稜線は帰りでも踏み抜き多発とまではいかず、重くなった雪で足取りも重くなったが傾斜が緩い分だけ体力を使わなくて済んだ。標高1940m付近で境尾根を離れて少しばかり斜め上に上がり気味に上俵山を巻く。さすがにここでの踏み抜きは体力を絞られて休憩しようかと思ったが頑張る。最後の谷の源頭を越えると往路の自分の足跡登場、。この後は自分の足跡を追った。帰りにも本日できた新しいスキー跡は無かった。まあ、今日は日曜だしな。
北西尾根を離れて急斜面を下り始める | 樹林の隙間から御嶽山 |
北西尾根を離れて急斜面の下りに入るとスノーシューでも踏み抜き多発で下りなのに非常に疲れる。たまに股までズボっと潜り、木に掴まって体を引き上げることも。この雪が固まるのは来週だろうか。これだけ暖かければ結構溶けて柔らかい部分は無くなりそうだが。
帰りの渡渉点。こちらは簡単だった | 右岸側下流はこの先で絶壁化 |
谷が近づくと足跡を離れて上流方向に針路変更。小さな沢を渡って本流に到着、往路より100mくらい上流らしく右岸の岩壁はすぐ下流だった。さて渡れるところがあるか。恐る恐る流れを覗くと、流れの真ん中に2箇所ほど雪を被った大きな石があり、両岸の石との間隔は50cmくらいで高さの差もほとんど無く簡単に渡れる場所だった。なんだ、こんないい場所があったのか。でも登りでここに到達するには右岸岩壁を高巻きする必要があり、この周囲にはスキー跡は見られない。こんな場所が下流にあればいいのに。
高巻きしてここで安全地帯、トラバースに入る | 高巻きが終わり緩斜面帯に入る |
支流を渡ってなおも進む | 林道に出た |
スノーシューを履いたまま簡単に対岸に渡り、急斜面をよじ登って標高差30mくらい上がると傾斜が緩んでトラバースすると樹林が開けた明るい斜面に出た。眼下の雪に覆われた平坦地の向こうに林道が見える。あとは安全地帯だが最後に小さな谷をスノーブリッジで渡り、斜面をよじ登って林道へ。スノーシューを脱いで上がっていくとスキーヤーの車がまだあった、というか、まだお昼なのでいくらなんでも御嶽往復では戻ってこられないだろう。林道を上がって青年の家の前に出るとライトバンが止まっていたが、これは登山者ではないだろう。そこから1,2分で車だった。